西尾維新『掟上今日子の推薦文』うーむ…

西尾維新の『掟上今日子の推薦文』を読んだ。忘却探偵掟上今日子の2作目である。前作の短編連作形式と違って今回はプロローグにあたる短編とその続きの本編の2部構成で語り手も新キャラになった。推理物としての内容はともかく、細かい描写が気になってどうにも集中できないまま読み終えてしまった。絵とか描かない人はスッと読めるんじゃないかと思います。

何が気になるかというと絵や美術館絡みの描写。こういうツッコミをいれるのは野暮だとはわかってるんだがどうしても気になる。『ペインティングナイフで人を刺す』というのは無理がありゃせんかえ?

この形を見たら一目でわかると思います

いや、あれって結構薄くてしなるし形状的にも柄とブレード部分の接続がクランク状になってたりで服を着てる人に刺すのは難しいと思うですよ。たぶん曲がっちゃうんじゃないかなぁ。素肌に切りつけたらそりゃ切れますけどね。

ついでですが、マンガなんかで絵をペインティングナイフでズタズタに切り裂くみたいな場面あるけど、あれもねぇ。慣用表現みたいになっちゃってるけど実際にはまず誰もやらん行為だし。破壊衝動を叩きつけるには向かない道具です。何よりも『ナイフ』という名称だけど刃はついてないしね。使ってるうちにキャンバスや絵具と擦れて刃のようになっちゃうというのはありますが…。

『クビキリサイクル』でも使ってたけど「絵」に対して「割る」って表現を使うのはやっぱり違和感あるなぁ。支持体が割れるような素材なのか、はたまた絵具が「割る」というのにふさわしいほど分厚くてガチガチに乾燥していたのか?なんて思っちゃう。
その他にも絵具で白髪を染めたりと変だとか無茶と感じる描写多し。美術館の警備・監視とかも実態とちょっと違うかなぁ。

西尾維新は結構好きなんですが今回はちょっと。割と博覧強記な人だと思うんだけど、文字だけでの知識も多いって事になっちゃうのか。物を書くのに実践や実体験は重要ですわね。だからといって岸辺露伴みたいに虫を食べたりされても困るけど。

推理小説だし舞台装置としての背景とか書割みたいなものだから直接推理とは関係のない美術の考証なんてどうでもいいじゃんと言われたら、まぁそういうものかもしれません。ただ思考ゲームとしては文中の表現が文字通りうけとってよいのか引っ掛けなのか訳わからんので困るし、読んでて「ん?」ってつっかえちゃうんですわ。言葉に対してはかなり拘りがあるであろう作者だけに何かこう釈然としないというか。

美術以外の部分に関してはいつも通りの西尾維新なのでファンならたぶん大丈夫。個人的には前作『掟上今日子の備忘録』のほうがお薦め。

 
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