諸星大二郎『西遊妖猿伝』とその他お薦め西遊記

諸星大二郎としては珍しい長編。西遊記をわりと現実的に再構成している作品である。猪八戒や沙悟浄は普通の人間だし、悟空もほぼ常人で觔斗雲にも乗らないし、分身の術のような仙術も使わない。

序盤は天界で大暴れの場面も唐の長安になってたりと外連味も少なく退屈に見えるかもしれない。しかし大唐編だけでも一度通して読んだ後なら印象が変わるはず。この作品のエンジンがかかってくるのは取経の旅が始まってから。

当時の天竺への旅路はこんな感じだったのだろうか…という所に混じってくる妖怪・怪異要素の塩梅が素敵。蚯蚓蠱のミミズがどう見てもモンゴリアンデスワームとかニヤリとするようなネタも多し。

自分が読んだ西遊記の翻訳の挿絵って旅路の全てが中国風のものしかなかったのだが、『西遊妖猿伝』はちゃんと中央アジアや西域の風景や建物・服装など現地の風俗を描いている、立派。(時代考証が合っているかまでは自分の知識ではよくわからん)

問題はいつ完結するんだかさっぱりわからん事か。30年以上前から連載だもんなぁ……。

小池一夫・小島剛夕『孫悟空』

西遊記を題材にしたマンガで別の意味で面白いのが、『子連れ狼』の小池一夫・小島剛夕コンビが描く『孫悟空』。三蔵一行はみな広島弁で話し、○○○の親分にしか見えぬ悪鬼の如き所業で暴れまわる三蔵法師。孫悟空はその下で苦労ばかりの常識人という怪作である。

三蔵「見さらせーーッ おどれらーーッ こんくそッ!! もやしちゃるッ もやしちゃるッ」
金角「あれが仏に仕える坊主なんかいのう おまえ分身も焼かれちょるンぞ!!敵も味方もありゃアせんじゃアないの」
悟空「いったン担いだ御輿はかンたンにはおろせンのよ」
こンな調子である。一読の価値はあるので機会があったら読んでみていただきたい。

書籍の西遊記

岩波文庫の中野美代子訳の西遊記が児童向けの簡易なものでなくちゃんと全編翻訳している。全10巻と長いがそれだけの価値はある。ただしバトル関連の訳がなぁ…中国武術に明るくないのだと思うが、武術の型の描写とかどうにも珍妙な訳が多いのだよね。技や套路などの固有名詞を全部普通の言葉に訳しちゃってる感じ。そこだけ残念。(もしかしたら今の版では訂正されているかもしれない)

 
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