耳掛けヘッドホンレビュー『KOSS KSC75』謎の満足感

2018年5月10日

KOSSの製品はThe PlugとKEB/24(←BeyerdynamicのDTX50廉価版OEM)以来でほんと久々だ。これまで愛用していたAurvana Airが断線してしまったのでコスパ抜群と噂のKOSSのKSC75を購入。

なぜ耳掛けかというとオーバーヘッドの開放型に近い聴こえかたを求めて。Aurvana Airに慣れてしまうとどうにもオーバーヘッドは煩わしくてしょうがないのでやっぱり無理。しかし、なんでこう絶滅危惧種やマイナー物にばかり魅かれてしまうのかねぇ。

なるほど、KSC75とはこういうものか

KSC75のデザインはトゲのないウニを連想させる。高級感はカケラもなし、写真で見たよりもはるかに安っぽい。まあ、お値段がお値段だからね…。
ヘッドバンドによる抑えも効かないし使われている部材がほとんどプラスチック製でヤワだから制振は弱そう。

KSC75

PortaProとほぼ同じドライバだがチタンコーティングの廉価版?らしい。それが耳掛けのせいで大量に音が逃げた結果、低音強めくらいでバランスとれた…という感じ。

音の第一印象は予想以上に解像度が低い。でも聴いているうちにそれは誤解で割と解像している事に気づく。必要十分なだけはあるけど緩めで角のとれた音かね。

脳が慣れるのかエージングなのかだんだん音が締まってきてる気はする。高音も天井が低くて息苦しい感じだったのがかなり伸びるようになってきた。低音の量はあるのだけれどAurvana Airなどのイヤホンのほうがハッキリ聞き取れる。
(※追記:やはり慣れによる部分も大きいようだ。他のヘッドホン等を使うと脳内チューニングがリセットされ、特に解像感が初見の印象に戻って物足りなくなってしまうかも。KSC75だけ使っているぶんには問題ないし、慣れるに従ってこんな音も聴こえたのか…と驚いたりするぐらいなのだが。)

ドライバの中心と耳孔の位置を合わせてイヤーパッドと耳掛けで耳たぶを前後から挟むイメージで固定すると低音が逃げづらくなり高音が直で耳に届くかなり刺激的な音になる。装着できたと思ったところから更に耳たぶを引っ張り出して本体を嵌め込むのがコツだ。
耳たぶが挟まれてる感じがちょっと窮屈だしマッタリ適当装着・聴き疲れしないモードと使い分けが肝要やね。※音の響きは耳たぶに嵌め込まないほうが広い。

KSC75のいい所

柔らかめで聴きやすく厚みのある音。耳掛けのくせに耳乗せ開放型を手で押しつけたくらいの低音が普通に装着して聴こえる事。元気のいい音というイメージだが、ちょいと音量を下げれば自然に聞き流せるので作業や思考の邪魔にならずダラダラ長時間聴くにも悪くない。

音は比較的近くから鳴っているよう聴こえる事が多いのだが、やたらに抜けがよく空間が広く感じる。押し寄せた音の波がスーッと遠くへ通り抜けていき、低音が肩のあたりまで響く(錯覚か?)。この聴こえかたが心地良く、購入前に期待していた以上だ。録音のいいヤツを聴くとちょっとミニコンポのスピーカーっぽい感じがする。それと着けた時の位置によっては横どころか斜め後方から音が聴こえてくる事も多く、ある意味サラウンド的?最近の日本のCDとかだと空間が訳わからんくて全然ダメだけど。

音質について採点するとAurvana Airが一枚も二枚も上手なのだけれど、実際に音楽を聴いてイイ!と思うのはKSC75のほうが多い。これはイヤホンとヘッドホンの音の届きかたの違いが大きいのだろう。自分の好みは音を細かく聴き分けられるよりもスピーカーに近い鳴りを好むって事なのだと思う。

KSC75の欠点

特定の音域だけ低音に覆われて変に曇ってしまうっぽい。なのでこの音域が強い曲は全体が霧の中のようにボヤけてしまう。9割以上(適当)の曲は問題ないとは思うが…。

もう1つはある程度以上高い音がギラギラと耳障りになる事がある。耳掛けという性質上しかたがないのだが、装着位置の微妙な違いでけっこう音が変わる。この高音域の暴れもちょっとした位置の違いで強調されたり収まったりする。どうもKSC75は耳たぶの形の違いなんかで聴こえかたに個人差がかなり出そうだなぁ。

※追記:脳内?エージングが進むとこれらの欠点はかなり解消されてクリア感が増し、高音の暴れも落ち着く。「ようこそジャパリパークへ」出だしのホルンのあたりはもわーんとしていたのが一ヶ月経ったらスッキリ聴こえるようになった。

遮音性と音漏れはについては期待しちゃダメ。室内で使う事しか考えていなかったから自分的には問題なし。遮音性のなさは今まで使ったヘッドホン・イヤホンの中でも最高クラス。ここまで周りの音が聞こえるのはちょっと記憶にない。そのせいもあって動画視聴だと環境音がKSC75から聞こえてくる音なのか外からの音なのか判別がつかない事も。

KSC75装着時の耳の痛み対策

右はそうでもないのだが左の耳掛けが耳に当たって妙に痛い。針金を曲げて開き具合やカーブなどを変えてみたけれど今イチ改善しない。何でじゃ?と思いよくよく見てみたら耳掛けを覆っている樹脂のゲート跡が出っぱっていた。さすがUSA設計のMade in China。コスト的にキレイに切り落としたり処理に金をかけられないのはわかるんだけどさ。

痛みの原因はKSC75の重量でもなければ耳掛けの形状のせいでもなく、切り落とした跡の処理が雑で耳介にチクチク当たっていただけだった。

KSC75
赤丸以外にも削る箇所あり

はみ出たゲート跡をプラモのゲート処理の要領でカッターと耐水サンドペーパーを使い慎重に削り落としたところ、見事に痛みが消えた。一番気になるのは写真の2ヶ所だが、これらが目立たなくなると今度は側面の跡が当たるのが気になって…って感じで結局ほぼ全て処理する事に。ついでに金型の合わせ目のパーティングラインも消せば完璧。

耳の裏って普段何かに触れる事のない場所だから微妙な凸凹が気になるんやね。付けてて痛いとか痛くないとかネットの評判がバラバラなのもこのへんの個体差が影響してるんじゃなかろか。

後は針金の微調整でいい感じに仕上がった。耳かけ前側の金属球あたりは構造的に最も圧迫され痛くなりやすい部分。ここに力があまりかからないようにうまい事曲げたって下さい。

調整さえ済んでしまえば装着は一瞬。それでも耳掛けの存在感のなさはAurvana Airの勝ち。まあ、あっちは本体だけでも固定できるから耳掛け部分にだけ頼り重量がかかるKSC75が不利なのはしょうがない。

10年以上生産され続けているというのも納得。
料理に例えると岩塩を擦りこんだ肉塊を焚き火で焙りながらナイフでこそげ落として喰う。洗練も最新技術もないけれど、こんなもんマズいはずがないじゃない。そんなヘッドホンです。

そこらのTV用のショボいヘッドホン並の価格でこの音はやっぱり異次元。こんな安物なのに悔しいけれど妙にイイモノ買った満足感がある。今のところAurvana Airよりも気にいっている。Air断線後にLIVE!を買った時は全く合わずやっちまった感が強くてAir買い直すべきだった…と思ったものだが、それがなかったらKSC75を買う事もなかったので結果オーライか。

CREATIVEの名作オープンエアイヤホン 『Aurvana Air』